2025.08.07
新病院情報
新病院について病院長が取材(m3.com)を受けました vol.2
HCU新設、鹿児島市以外で初めてPET-CT装置も
姶良・伊佐医療圏の基幹病院として高度急性期医療を提供している霧島市立医師会医療センター(鹿児島県霧島市)は、病院を建て替え2025年2月1日に新病院を開院した。新病院に手術支援ロボット「ダビンチXi」・PET-CT装置・高度治療室(HCU)を導入した理由などについて、病院長の河野嘉文氏に聞いた。
若手外科医の確保に「ダビンチXi」が不可欠
――新病院の概要を教えてください。
新病院は、当院の敷地内西側にある駐車場と空地を利用して建てました。地上6階建てで、地下はありません。
1階には、一般外来と検査の機能を集約しました。旧病院の一部の施設を残し、救急外来、小児外来、感染外来、外来化学療法室を配置し、新病院フロアの中心部にはどの外来からもアクセスしやすいように中央処置室を設けています。検査部門としては、採尿・採血、生理検査、内視鏡、PET-CT、放射線があります。
河野嘉文氏
2階には、手術室と高度治療室(HCU)を設けました。新設した手術室は4室(合計5室)で、うちロボット支援下手術対応の手術室と、BCRクラス1000の手術室を各1室整備しました。手術室の隣に設けたHCU10床のうち1床は陰圧対応の個室です。
3階から5階は病棟です。看護動線の短縮と病棟内の見渡しの良さを実現するために、フロア中心部の左右に2つのスタッフステーションを設置し、病室は各スタッフステーションを中心として十字型に配置しています。
4階フロア図
6階は、人間ドック専用のフロアです。診療・入院エリアと区分けし、眺望の良い最上階で快適に健診ができるようにしました。
――ロボット支援下手術対応の手術室を整備し、手術支援ロボット「ダビンチXi」を導入したのはなぜですか。
霧島市内では、脳神経外科と整形外科は他の専門病院でも手術を行っていますが、それ以外の胸腹部や泌尿器系などの外科手術については当院だけが実施しています。この状況は今後も変わらないと考えており、当院が担うべき大きな役割は外科手術を継続することです。そのためには外科医の確保が重要になります。
近年、鹿児島県内の外科系手術では、ロボット支援下手術がかなり普及してきました。この現状を考えると、外科医や泌尿器科医、特に若い医師が当院で働きたくなるようにするためには、手術支援ロボット「ダビンチXi」の導入が必要です。そこで霧島市には、「手術支援ロボットを導入することによる医業収益の増収は、ロボット支援下手術への診療加算が限定的なのであまり見込めません。しかし、霧島市立医師会医療センターが今後も外科手術を行える病院として存続していくためには、手術支援ロボットを導入し若い外科系医師に入職してもらうことが不可欠です」と話し了承を得ました。
若い外科系医師のリクルーティングを主な目的として導入した手術支援ロボット「ダビンチXi」ですが、離島在住の方の医療に貢献することも考えています。現状では離島で手術支援ロボットを導入する病院はないので、鹿児島空港から車で約15分の当院でロボット支援下手術を受けられることは、離島の患者さんにとっても有益だと考えています。そのため、当院と奄美大島や徳之島、喜界島の医療機関との連携をこれまで以上に強化し、離島の住民のみなさんにも当院の特徴を積極的にPRしていきます。
手術支援ロボット「ダビンチXi」
――ロボット支援下手術への取り組み状況を聞かせてください。
手術支援ロボット「ダビンチXi」を導入するにあたり、鹿児島大学病院からロボット支援下手術のプロクター資格を持った医師を常勤で派遣してもらいました。現在は、泌尿器科では前立腺癌へのロボット支援下手術から開始して、外科では大腸の手術から取り組んでいます。今後は診療実績を積み重ねて他の疾患へ適応拡大していく予定です。
ロボット支援下手術の様子
姶良・伊佐医療圏内で唯一の高度急性期病床を新設
――手術室の隣に既存病院にはなかったHCUを新設したのはなぜですか。
2016年11月に鹿児島県が策定した地域医療構想では、2025年における姶良・伊佐医療圏の必要病床数は、高度急性期病床125床不足、急性期病床786床過剰、回復期病床388 床不足、慢性期病床756床過剰と推計されています。一方、2021年4月から当院の病院長を務める中で、「高度急性期病床125床不足」は計算上の需要であり、実際にはそこまでの医療ニーズはないと考えています。
しかし、これまで医療圏内には、高度急性期病床が全くありませんでした。当院も全身麻酔での手術を年間約1000件以上実施していましたが、一般病床で術後管理を行っていました。これらのことを考え、新病院にはHCU10床を設けました。
HCUは規格的にICUとしても使える設備を備えており、医療ニーズがあればHCUをICUに転換することができます。現状は、手術の多くが鏡視下手術になっているため、HCUでの術後管理が必要な患者さんは多くありません。当面はHCUとしての運用を続けていくつもりです。
高度治療室(HCU)
鹿児島市以外の市町村で初めてPET-CT装置を導入
――新たな医療機器としてPET-CT装置も導入していますが、どのような理由からですか。
霧島市内にはPET-CT装置を導入している病院がなかったので、市民はPET-CT検査をするためだけに鹿児島市や宮崎県の都城市の医療機関に出向いていました。霧島市民にとって不都合な状況で、特に高齢者には大きな負担となっていました。霧島市と姶良地区医師会が、この状況を改善し市民の負担を軽減することに強い意欲を示したこともあり、新病院にゼネラル・エレクトリック社製のPET-CT装置「Omni Legend」を導入しました。鹿児島市以外の市町村でのPET-CT装置の導入は、当院が初めてです。
PET-CT装置「Omni Legend」
これまで当院では、がん患者さんについては、PET-CT検査をするため主に鹿児島市内の医療機関を紹介していました。その際に患者さんからは、「遠くに行くのは大変だから、この病院で検査をできるようにしてほしい」という要望が霧島市や病院に届いていました。今後は、患者さんに負担をかけることがなくなるので、医療スタッフも喜んでいます。
◆河野嘉文(かわの・よしふみ)氏
1981年鹿児島大学医学部卒業。聖路加国際病院研修医、バーゼル大学血液内科、徳島大学小児科、九州がんセンター小児科を経て、2002年9月から鹿児島大学医学部小児科教授、2017年4月から鹿児島大学医学部部長、2021年4月から霧島市立医師会医療センター病院長。(元)日本小児学会小児科専門医、日本血液学会血液専門医、日本造血・免疫細胞療法学会造血細胞移植認定医など。
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